[今週のつながる劇場]2013年12月20日
12月20日 ~新宿伊勢丹~12月20日の舞台は「新宿伊勢丹」。
![]() 「あなた、どうしよう。今、あなたのお母さんから連絡があって、 明日一緒に新宿に行って欲しいって。お歳暮選びを手伝って欲しいんだって!! え? “楽しんでな”って、そんなの無理よ。 ちょ、ちょっと待ってってば!(ピッ(電話の切れる音))」 私はカゲヤマ・ミノリ、29歳。 去年の夏に結婚したばかりのまだまだ新婚。 生まれ育った東京を離れ、主人の実家と職場がある栃木へと嫁いで来たのだけど……。 突然舞い降りた、お母さんからのお手伝い命令に大パニック中! たしかに、新宿には詳しいけどお母さんと2人となると話は別でしょう? だって未だかつて2人っきりでちゃんとお話なんてしたことないもの。 丸々1日なんて絶対無理! これは主人のマサヤさんに助けてもらうしかないと思って、携帯にSOSコールをしたというのに… あっけなく切られてしまったというわけだ。 緊張でほとんど寝られないまま迎えた翌日。 駅に向うと、そこにはすでにお母さんの姿が。 「お待たせしちゃってすみません! 支度に手間取ってしまって」 慌てて駆け寄る私にお母さんはニコニコしてるだけ。 うーん、感情が読めないよぉ。 新婚生活の話や、テレビドラマの話でなんとか場を持たせることおよそ2時間、 やっと目的の『新宿 伊勢丹デパート』へと到着。 すっかり疲れている私とは対照的に、お母さんは元気満々のご様子で、 “デパートでお買い物なんて、いつぶりかしら”なんて目を輝かせてる。 「お母さん、お歳暮ですよね。6階に特設コーナーができてますから、そこから見て回りましょか?」 “ミノリさん、詳しいのね”とお母さん。 “そりゃそうですよ、だって、昨日携帯でさんざん調べましたから!”とは言えるわけなく…。 ははは、愛想笑いで場を繋いでおこう。 11月の頭から設置されたお歳暮の特設カウンターはすでに大混雑。 なんとか大量のオーダーを終えたものの、さすがにお母さんも疲れちゃったみたい。 「お母さん、ひと休みしませんか? せっかくなら3月に大改革されたファッションフロアに行きましょうよ」 “お茶するのにファッション?”不審そうな顔をするお母さん。 「そうなんです、今まではお洋服屋さんが並ぶだけの空間だったんですが、 改造後はカフェやお花屋さんを点在させたんですって。 フロアがひとつの街みたいになっていて、歩いてるだけでも楽しいと思いますよ」 “本当にミノリさんは詳しいわ、ついて来てもらってよかった”と嬉しそうなお母さん。 お母さん、本当に私に感謝してくれてるんだ…。 それなのに私、面倒なんて思っちゃって…。 胸にチクッと痛みが走った。 「お母さん、ごめんなさい。実は全部、昨日携帯で調べたことなんです。 お母さんと2人でお買い物なんて初めてで、私、何を話していいのかわからなくて…。 一所懸命ネタを仕込んでたんです」 一瞬ポカンとした表情を浮かべた後、大笑いするお母さん。 “もーやだわ、私がいじめるとでも思った?あははは” ……いやいや、そうじゃないですけど…。 “でも携帯って本当に便利ね”そう言うとお母さんは “私は機械が苦手で”とお手上げのポーズでおどけて見せた。 「だったら私が教えます! 携帯が使えるようになると色々便利ですよ。 地図も見られるし、ほかにもレシピを簡単に検索できるアプリもあるんですよ。 それにメールも文章だけじゃなくて写真も送れるようになれば、もっと楽しくないですか?」 突然始まったカフェでの携帯講習会。 「写真を添付するときはこのボタンです。フォルダに写真が…、 えっと、そうだ。実際にやってみた方がわかりやすいですよね!」 私は店員さんを呼んだ。 「すみません、写真撮ってもらってもいいですか?」 お母さんと並んでピースサイン。“ハイチーズ!” 「今の写真を見る時はこのボタンです。ほら、良く撮れてる! それを添付するときはこうして…。 せっかくだからマサヤさんに送ってみましょうよ。 お母さん、なにかメッセージを書いてください。 書き終わったら送信ボタンを押せば完了です!」 “えっと、これをこうして…”真剣な顔をして携帯をいじるお母さんが可愛く見える。 何て書いたんだろうな…なんて思ってたら、携帯が鳴った。 (メール着信音) 「あれ、私の携帯が鳴ってる。誰だろう、あ、マサヤさんからメールです」 “今、おふくろから写メつきメールが来たよ。ミノリさんとお出かけできて本当に楽しいわ、だって” お母さん……。 メールの内容を察したのか、お母さんが照れ笑いしてる。 “ほら、うちは娘がいないでしょ? だからミノリさんとお出かけするのが夢だったのよ”だって。 そんな風に思っててくれたんですか。 私、全然知らなかった。 「お母さん、いつでも電話してくださいね。メールだっていつでも! あ、さっきの写真、私にも送ってください!」 “えっと、どのボタンだったかしら”と写真を探すお母さんは楽しそう。 私、お母さんとも繋がれたんだね。 ・・・慌てて主人の携帯に電話したのだけど。 |
2013年12月13日
12月13日 ~丸の内KITTE~12月13日の舞台は「丸の内KITTE」。
![]() 「今、着きました。え? 地下の入り口? やだ、私一階にいるわ。 そっちに向うから待っててくれる?」 携帯をポシェットにしまって地下へと急ぐ。もう、どこにいるのかしら? 私はヤマガミ・カナエ、49歳。 今日は丸の内に3月にオープンした『KITTE』を見ようと 東京に住むお友達、ヨウコさんと待ち合わせたものの…。 出入り口が多くて迷っちゃったじゃない。 ほんと、こういうときに携帯のありがたみを感じるわ。 「あ、ヨウコさん! こっちこっち! よかった合流できて。 混んでてびっくりしちゃったわよ。 3月にオープンして半年以上経つのに、すごい人気なのね」 ヨウコさんが大きくうなずく。 『KITTE』は日本郵便が初めて手がけた商業施設。 “いろいろなヒト・モノ・コトとの出会いを繋ぐ”をコンセプトに、 日本各地から集めた味や伝統工芸を扱うお店を揃えているんだって。 「そうそう、ここは昔、東京中央郵便局局舎だったのよね。 ここはその一部を保存、再生して建設されたんだって。 過去と現在もしっかり繋いでるってワケか。」 “何ひとりでぶつぶつ言ってるのよ。それよりこのフロア面白いと思わない?” ヨウコさんの声でふと我に返る。 「あ! 東京に秋田、北海道…、何ここ、地下一階全体がアンテナショップの集合体になってるの?!」 私のリアクションに大満足の様子のヨウコさん。 “早くお買い物しましょう!”って、ちょっと待ってよー! 「すごい、駅弁まで売ってるなんて。ここにいるだけで全国を旅できちゃうじゃない。 名古屋まで行かなきゃ食べられないと思ってた手羽先まである。あ、そうだ! このお店の看板をバックに写真撮ってくれない? 名古屋に嫁いだ娘に送ったらビックリすると思わない??」 娘が結婚して3年。 名古屋へとお嫁にいった娘、ミカとのコミュニケーションツールはもっぱらメールになっていた。 “ご飯食べてる?”“風邪、引いてない?” そんな些細なやりとりばかりだけど、その一通一通が娘との繋がりを再認識させてくれる。 「“名古屋に来ちゃった、手羽先食べてます。母より”」メール送信! (電話着信音) 「あ、ミカ? ごめんごめん、ウソなのよ。今、丸の内にいるの。新しくできたで『KITTE』に 遊びに来たんだけど、名古屋名物のお店があったからついね。あはは、ごめんなさい。みんな元気? そうよかった。またメールするわ。みなさんによろしくね」 内容を察したのか、ヨウコさんが隣で笑っている。 「本当に名古屋に来たのかと思って、慌てて電話くれたわ。驚いたって怒られちゃった。 でもすぐ電話くれるなんて、ちょっと嬉しいわね」 “私もあとで娘にメールしようかな”とヨウコさん。 そうだった、ヨウコさんの娘さんも去年、九州に嫁いだばかりだったっけ。 「家にいるときは“早く嫁に行けー!”なんて言ってたのに、いざいなくなっちゃうと寂しいのよね。 この前も名古屋からお味噌を送ってくれたんだけど、娘の名字が違うでしょう? 今でも一瞬「ん?」ってなっちゃうのよ。もう3年も経つのにね」 “わかる、わかる”とヨウコさんが大きくうなずく。 「せっかくここまで来たんだから、娘達になにか買って送ってあげない? 郵便局もあるからこの場で小包も出せちゃうわよ!」 結局、自分たちの買い物より娘に送るモノ探しに夢中になってしまう私たち。 親はいつまでたっても親なのよね。 「お菓子に、即席ラーメンにカレーのルー?? ヨウコさん、たくさん買ったわね」 商品でいっぱいになったカゴを見ながら笑うと、“人のこと言えないじゃない”だって。 確かに、私のカゴも娘へのお土産でいっぱいになっちゃった。 小包みを発送し終えたので、娘にメール。 「KITTEのお土産を送ったからみんなで食べてね。 北海道から沖縄まで、いろんなところの美味しそうなものを入れといたわ。お楽しみに♪」 送信っと。 (メール着信音) 「“そんなにいっぱいありがとう! でもお母さん、丸の内にいるなら、そのまま新幹線に乗って会いにくればいいのに”、か。 ほんとにそうね。」 娘の気持ちが嬉しくて、思わずうるっとしてしまう。 ヨウコさんの携帯にも娘さんからメールが来たみたいで、その横顔から微笑みがこぼれていた。 「今度の休みは娘のところに遊びに行こうかしら。そしたら名古屋の手羽先買ってくるわね」 “ありがとう、でもここで買えるじゃない”とヨウコさん。 「それもそうね。じゃぁ、お土産は娘との思い出話で」 二人で笑った。 ![]() そして、今週末のauショップお得情報は…
「auショップ足利北」の太田ゆき美さん♪ |
2013年12月6日
12月6日 ~井の頭恩賜公園~12月6日の舞台は「井の頭恩賜公園」。
![]() 私の名前はササハラ・ノリコ、33歳。
今日は東京の吉祥寺にある私の実家に来ています。 主人が父と釣りに出かけちゃったので、 今日は息子のタカノリ、5歳と2人っきりのデートです。 「タカちゃん、ボート乗りたい?」 私の問いかけに、満面の笑みで“うんっ”と答えた息子を連れて来たのは、 井の頭恩賜公園。 東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる都立公園で、 公園内にはボートに乗れる井の頭池をはじめ、 動物園やテニスコートまである東京の癒しスポットです。 「タカちゃん、着いたよ。あ、走ると転ぶから気をつけてー!!」 私の声なんてそっちのけで走り出した息子。 慌てて追いかけると、ん? 何か拾ったみたい。 「なーに? あ、キレイな紅葉! そっか、もう紅葉の季節なのね」 頭を上げると、そこには赤や黄色に染まった木々が空へ向って伸びている。 ここは“日本さくら100選”にも選ばれた場所だけど、紅葉もとても素敵。 今日はお天気もよくて最高ね。 「さぁ、タカちゃん。ボートに乗りましょうか?」 息子が選んだのはスワン型のボート。 昔はこれに乗るのは恥ずかしいと思ってたけど、 母親になると気持ちも変わるのね。 一所懸命ペダルを漕いでる息子が可愛くて仕方ない。 パシャ。(写メの音) “タカノリが一所懸命ボートを漕いでます。見て、この必死な顔!” 両親と主人にメール送信っと。 “ママー! メールしてないで漕いでー!!” あ、バレちゃった。「ごめんごめん、さぁ、行くよ〜!」 コツを掴んだボートはスピードを上げて池の中心へ。 「タカちゃん、見て。水面が赤や黄色に染まってるよ!」 水面には鮮やかに色づいた木々の姿が映り込んでいて、とても幻想的。 そうそう、この景色こそ井の頭公園の秋の名物だっけ。 周りのカップルを乗せたボートもみーんな止まって水面を見てる。 「タカちゃん、このお池の噂知ってる?」 息子が“なーに?”と首を傾げる。 「あのね、ここには弁財天っていう女の神様が祀られてるの。 その神様はね、とってもヤキモチ焼きなんだって。 だからね、ここでデートすると弁財天様が怒って、その2人を別れさせちゃうんだって!」 息子が何か考えるような顔をしていると思ったら、急に泣きそうな顔になっちゃった。 “僕とママも別れちゃうの!?” あ、そうか。今日は2人でデートって言っちゃったもんね。 「違う、違うよ。大丈夫。タカちゃんとママはずーっと一緒だよ。 それにね、昔ママはここでパパとデートしたこともあるんだよ。 でも別れてないでしょ? 結婚して、タカちゃんを産んで、家族になったんだよ。 きっと弁財天様のヤキモチに勝ったんだよ!」 (メール着信音) 「あ、パパからだよ。見て、タカちゃん。パパ、こんなに大きなお魚釣ったって! 今日はじぃじがお料理してくれるんだって。楽しみだねー! タカちゃんの写真も送ろうか。 はい、笑って(パシャ)」 “釣れてよかったね! 今、タカノリに井の頭公園のボート伝説を話したら泣きそうな顔されちゃった。 私たち、別れずに家族になれて幸せね。 これからもよろしくお願いします”送信っと。 普段照れくさくて言えない言葉もメールだと伝えられるから不思議。 ケンカした後の仲直りにもよくメールを使ったなぁ…。 「タカちゃん、そろそろ戻ろうか? パパたちと駅で待ち合わせしようよ?」 “さっきのもみじ、もう一枚拾ってパパへのお土産にする〜”と嬉しそうな息子。 今は私たちにべったりなこのコだけど、いつか彼女を連れてこのボートに乗ったりするのかな? その時はママと一緒に来たことを思い出してくれるのかしら…。 やだ、ちょっと寂しくなってきちゃったじゃない。 (メール着信音) 「あ、タカちゃんの気持ちがパパに伝わったみたいよ。“16時に駅につくから一緒に帰ろう”だって」 公園内でポケットいっぱいに紅葉を拾い集めた息子の手を繋ぎ、駅へと向う。 「あ、パパたちだよ。手、振ってる!」 じぃじとパパの顔を見るなり、自慢げに紅葉を披露する息子は誇らしそう。 その姿を何枚も写メするオトナ2人の姿はなんだかとても滑稽だけどね。 「まったく、孫バカなんだから(笑)」 すると突然、息子が私と主人の手をひっぱって、繋がせようとした。 「タカちゃん、どうしたの??」 “絶対別れちゃだめだよ”だって。 「ボートの伝説、タカノリには怖かったのかな?」主人と笑う。 「大丈夫よ、タカちゃん。私たちは別れないし、じぃじもばぁばもタカちゃんも みーーんな繋がってるんだから。ほら、タカちゃんもじぃじと手をつないで帰りましょ。 ばぁばが待ってるわ」 |
2013年11月29日
11月29日 ~羽田空港~11月29日の舞台は「羽田空港」。
娘の海外旅行をきっかけに、家族の繋がる姿を上演しました。 ![]() 私の名前はカナヤマ・チカコ、46歳。 今日はこれから韓国へと旅立つ娘のアキを見送りに、 ドライブがてら主人と一緒に羽田空港へやってきた。 今から約3年前にオープンした羽田の新国際線ターミナル。 日本が誇る105店舗ものショップとレストランが集結したその様子は まるでひとつの街みたい。 中でも江戸の街並みを本格的に再現した「江戸小路」は 散策するだけで、日本の伝統や文化を体感できるようになっているんだって。 「羽田空港が国際空港になってから来るのは初めてよ。キレイねー! ちょっとアキ、写真撮って♡ パパ、一緒に撮りましょ!」 江戸小路の赤提灯をバックにハイチーズ。 “ママ、ハシャギ過ぎ!”娘には笑われたけど、いいじゃない。 「えっと、これを…、ハイ、送信っと。アキ、今携帯に写メ送ったからね。 韓国で寂しくなったらそれを見てパパとママを思い出して♪」 “たった2泊だってば!”娘はすっかり呆れ顔。 そうだけど……。韓国に住むお友達に会いに行く娘。 でも初めてのひとり旅だもの、娘を送り出す親としては どうしても心配になっちゃうのよ。 そうこうしている間に娘の搭乗時間が近づいて来た。 チェックインを済ませ、 ゲートへと向う娘の後ろ姿が小さくなっていく。 「あーあ、行っちゃった。アキがひとりで海外なんてね…。 18歳か、時間が経つのは早いね。なんだか寂しくなっちゃったわ」 “たった2日じゃないか”と呆れる主人。 「そうね…。よし、せっかくだからもう少し空港を見て行きましょうよ」 5階に上がるとさっき見た「江戸小路」の風景とは一転。 白を基調としたフロアにはアニメやキャラクターグッズのショップがズラリ。 なるほど、ここは日本の“今”を体感する場所なのね。 「ねぇ、あなた。プラネタリウムカフェだって! ちょっと寄って行きましょうよ♪」 見つけたのは“プラネタリウム スターリーカフェ”。 カフェメニューを食べながらプラネタリウムが見られるなんて、楽しそう! 「羽田から飛び立ち、世界各国へと向う旅路の途中で出会う星空や季節の星座が見られるんですって! ここで旅気分が味わえるなんてステキね。 そういえば新婚旅行で行ったサンフランシスコも夜便で、夜空が綺麗だったっけ。 パパ、覚えてる?」 “覚えてるよ、到着したときには時差ぼけでお前フラフラだったよなー、 機嫌悪くて参ったよ”って、思い出すのはそこじゃないでしょ! 天井いっぱいに広がる星空は、ここが空港だということを忘れるほど幻想的で、 気持ちは数十年前の新婚旅行へとタイムスリップ。 「パパ、また旅行に連れて行ってね」こそっとささやいてみたけど、聞こえたかしら? 「やだ、パパ。すっかり暗くなっちゃった! 空港も堪能したし、そろそろ帰りましょうか」 (メール着信音) 「パパ、アキからよ! ソウルに着いたって。そっか、今は海外からもメールできるのね。 なんだかすぐ近くにいるみたい」 (メール着信音) 「あ、写メも来たよ。お友達、とても可愛い子よ。Facebookで仲良くなったなんていうから、 心配してたけどいい子みたいで安心したわ。娘も世界とどんどん繋がって行くのね…」 “今、空港から栃木へ帰ってます。アキのおかげで久しぶりのデートができたよ”メール送信っと。 「国境を超えても繋がっていられるなんてすごいよね。離れてる感じが全然しないもの」 “そうだな”と主人。これからきっと娘はどんどん遠くに羽ばたいて行くのだろう。 その都度きっと寂しくなっちゃうんだろうな…。 ううん、大丈夫。私たちは繋がってるんだから。 “帰りも迎えにくるから到着時間をメールしてね” メール送信っと。 |
2013年11月22日
11月22日 ~表参道・キディランド~![]() 「フミカ、美味しいか?」 (……。無言。レストラン店内のざわざわ) 「最近、学校はどうだ? 楽しいか?」 「普通」 (レストラン店内のざわざわ) はぁ。私はウチムラ・カズキ。38歳。 娘のフミカを連れて表参道のファミレスでランチをしているのだが、まったく会話にならない。 中学1年生になる娘は世に言う反抗期まっただ中なのだ。 今日は家族で親戚の住む東京へとやってきたのだが、妻は私の母と姉と女3人で買い物に出かけてしまった。 退屈そうにする娘の機嫌でも取ろうかと連れ出してみたのだが…それが失敗だったか? 娘がまだ小さいときは、よく一緒に動物園や遊園地に行ったものだが、この歳になるとお手上げ。 「お父さんと歩くのは恥ずかしい!」と一蹴されるのがオチで、 今日、こうして一緒に表参道に来ているのは奇跡とも言える。 さて、これからどこへ行こう? 中学生が喜びそうなところ…。 デザートのパフェを食べている娘を見ながら考えていると、娘の携帯ストラップが目に入った。 これは、たしかリラックマ! そうだ、娘はキャラクター物が大好きだったんだっけ。 “表参道 キャラクター” 携帯で検索をかける。あったあった、そうそうキデイランド! 「フミカ、キデイランド行かないか? お前の好きなキャラクターがいっぱいあるぞ」 無言でうなずくも、ちょっと嬉しそうな娘。お、反応よし! 1950年11月の開店以来、60年以上にわたって親しまれてきたキデイランド原宿店。 2010年に一度新築工事で閉店したが、今年の7月にリニューアルオープンし、 扱うキャラクターの数も一気に増えたという。 お店に到着するとそこにはすでにたくさんの人たちが。 家族連れはもちろん、多くの外国人観光客でにぎわうその様子に、 ここが今でも原宿、表参道のランドマーク的な存在として愛されていることを実感する。 「ここ、お父さんが子供の頃におじいちゃんに連れて来てもらったこともあるんだぞ。 そのときはこんなにキャラクターの数もなかったけどなぁ。お、キティちゃんも今はこんなに オシャレなのかー。おい、フミカ、待ってってば!」 私の昔話には興味などない様子でどんどん店内奥へと進んで行く娘。 父親って寂しいなぁ…と沈んでいると、フミカが“こっち、こっち!早く!”と手招きしている。 どうやらお目当てのリラックマは4階に専門フロアがあるらしい。 「はいはい、今行くよ」なんて面倒なフリをしたけど、久しぶりに娘から声をかけられて心が踊る。 いけない、いけない。ニヤけないようにっと。 大好きなリラックマのフロアに娘のテンションは一気に上がったようだ。 文房具にぬいぐるみ、お弁当箱まで次から次へとカゴへと入れて行く。 「おいおい、そんなに買ったらお母さんに怒られちゃうぞ?」 こちらをチラッと見たあと、口をへの字にする娘。 あーあ、こういうときだけ可愛い顔をするんだから。ほんと、女はずるい。 “今、フミカとキデイランドに来てるよ。買ってやるけど、いいよな?” メール送信っと。 「フミカ、ママたちも買い物に夢中みたいだぞ。メールが返ってこない。もぅ、しょうがない。 全部買ってやるか。今日だけだぞ? 勉強もがんばるって約束な?」 “うん!”今日一番の笑顔を見せる娘。まったく、現金なんだから。 店を出たとき、ちょどメールがなった。 「なになに、“あんまり甘やかさないでよー!”だって。もう遅いよな、フミカ」 フミカが笑いながら携帯をいじってる。 「誰にメールしてるんだ?」 “内緒”って、またお父さんは蚊帳の外ですか・・・? 親戚の家に戻ると、先に戻っていた妻がフミカの持つ大荷物を見てため息。 “まったく、娘に甘いんだから”って…はい、その通りです。 すると妻が“ちょっとコレ見て”と、携帯を差し出して来た。 「ん? フミカからのメールじゃないか。“今、お父さんがいっぱいリラックマ買ってくれたよ。 嬉しかったよ”……。フミカ、、、あの時、お母さんにメールしてたのか」 “お父さんには素直に甘えられない年頃なのよ”と妻。 会話は減っても、気持ちが離れた訳じゃない。ちゃんと繋がってるんだね。 「フミカ、また行きたいところがあったらお父さんに言ってな。メールでもいいぞ」 娘は何も言わずにうなずいた。 |