[今週のつながる劇場]2013年10月11日
10月11日~国立競技場~10月11日の舞台は国立劇場。夫婦と親子のつながりを上演しました。
![]() 私の名前はサカシタ・ユウマ。36歳。
今日は妻のサツキと3歳になる息子のリョウタと「国立競技場」へとやってきた。 2020年の夏季オリンピック開催地が東京に決まり、解体されることになった国立競技場。 新しく生まれ変わる前の姿を一度見ておきたかったのだ。 「いい天気でよかったね。この辺りは秋になると銀杏並木がキレイなんだよ。 信号も少ないからランニングコースとしても最高なんだ。ほら、走ってる人がたくさんいるだろう?」 ん?今、サツキのやつ俺のお腹を見なかったか? たしかに最近ちょっぴりお腹が出てきた気もするが……。俺の頭の中を読んだのか、妻が笑った。 「はいはい、オレも走りますよ。涼しくなったらね。さ、国立競技場の正門を見に行こう」 1958年、旧明治神宮外苑競技場跡地に建設された国立競技場。普段は中に入ることはできないが、正門からでもその広さと力強さを感じることができる。 「そこに立ってよ。そうそう、リョウタ、こっち見て」 パシャ(写メの音) 「オヤジに送ろうかな、たしかオヤジは東京オリンピックのとき中学生で、そのときは東京に住んでたはずだから」 “今、家族で国立競技場に来てます。広くてびっくりしたよ。オヤジは見たことある?” 送信っと。 (メール着信音) 「お、オヤジだ。返信早いな(笑)。懐かしがってるよ。オヤジも子供の頃来たことがあるって。 国立競技場は『簡素』『優美』というデザインコンセプトで作られたんだってさ。オヤジ、物知りだなぁ」 そうそう、オヤジはいつもオレに色んなことを教えてくれたっけ。 「リョウタ、今見てる場所はね、もうすぐなくなっちゃうんだ。でも次はもっと大きくて、 宇宙船みたいな運動場ができるんだぞ。雨でもへっちゃらんだから」 呆れたように笑う妻。なんだよ? あ…、携帯で検索したのバレちゃったか。 いいんだよ、ほら、リョウタが宇宙船〜って喜んでるじゃないか。 「オリンピックのとき、リョウタは10歳か。今から体操とか習わせてみようか? あ、でもよく走り回るからマラソン選手も向いてるかも。水泳をやらせてみるのもいいな…」 ん? 親バカだって? うるさいなぁ、夢は大きい方がいいだろう? あ、リョウタ!転ぶから走るなって! 「ほら、あいつ足、速いぞ!?」 妻が笑った。 (メール着信音) 「オヤジからだ。“国立競技場の見学コースに申し込めば、中も見られたのに”だって。 え? そんなのあったんだ。オヤジ、きっと携帯で検索したんだな」 オレも慌てて携帯で検索。へー、知らなかった。“国立競技場スタジアムツアー”ってのがあったのか。 参加すると聖火台に登れたりするらしい。来月の実施予定はいまのとこ未定かぁ…残念。 妻がもの言いたげにこっちを見てる。 「はい、わかりました。オレの下調べミスです! いいじゃない、こうしてのんびりお散歩するのも。 この次はちゃんと下調べしてくるからさ、ね?」 来年の夏には解体工事が始まり、2019年の春には新しい姿で生まれ変わる予定の国立競技場。 今、見てる景色がどんな風に変化するんだろう。そしてオレたちも。 「そうだ、この近くにうまいラーメン屋があったはず。せっかくだから食べてこうよ。 リョウタ、ラーメン食べるか? よし、そこまでかけっこだ! よーい、ドン!」 きっと、今と同じように家族は繋がっているんだろうな。 そしてこれからももっとたくさんの人と繋がって行くんだろう。 |
10月4日~浅草花やしき~今日から始まりました「auつながる劇場」。
東京の注目スポットを舞台に、毎週1つの『つながる』お話をご紹介していきます。 第1回目となる10月4日の放送は、江戸時代末期の創業にして日本最古の遊園地、浅草花やしきを舞台に上演しました。 ◆浅草花やしき ・住所/東京都台東区浅草2-28-1 TEL03-3842-8780 ・営業時間/10:00~18:00 *季節・天候により変更あり。 ・アクセス/つくばエクスプレス「浅草駅」より徒歩3分 東京メトロ銀座線/都営地下鉄浅草線 東武スカイツリーライン「浅草駅」より徒歩5分 ★10/31(木)~11/6(水)『栃木県民の日』 栃木県に在住・在学・在勤の皆さまを入園無料でご招待! ※住所の証明が出来るものを持参必須 ![]() ![]() ~10月4日の脚本~
私の名前はモリヤマ・タケル。34歳。 今日は妻のシホと浅草に来ている。 実は先日、つまらないことで妻と大げんか。妻の機嫌を直すために久しぶりに夫婦水入らずで 出かけることにしたのだが、妻は未だ口数少なめ。 母が気を使って預かってくれた娘、ミホのことが気になっているのかもしれない。 「おふくろに電話しようか、ミホが気になるだろ?」 プルルルルル… 「あ、もしもし。今浅草ついたよ。ミホがぐずってないかと思ってね。 え? そうか、ははは。わかった、ありがとう」 不安そうな顔で私を見つめる妻。 「ミホ、楽しそうに遊んでるって。ケンカしてるあなたたちよりとってもいい子よって、 おふくろが笑ってたよ」 ・・・あ、少し笑った。 観光客で賑わう浅草寺を抜けると、花やしきが見えて来た。 妻が何かもの言いたげな顔をして私を見ている。 「お、覚えてるよ。結婚前に一緒に来たよね。隅田川の花火大会の日に。せっかくだから入ってみようよ」 ここ、花やしきは日本最古の遊園地。決して広いとは言えない敷地内に、どこか懐かしい乗り物が並んでいる。まるでここだけ時間が止まってしまったようだ。 「ここのローラーコースター、日本現存のジェットコースターの中で一番古いんだよ。今年で還暦なんだって。60年だよ? おふくろと同じ歳だってさ。せっかくだから乗ってこうよ。大丈夫、怖くないって」 そういって、妻を引き連れ乗り場へ向ったのだが、なんだか緊張してきた。 だって、ガタガタ言ってて今にも壊れそうなんですけど?? 「バカ、怖くなんてねぇよ。お前こそビビってるんじゃないの?」 強がってみたものの、ベルト握る手に力が入る。 ゆっくりとレールを登っていく小さなローラーコースター。 おぉ、浅草寺が見えるよ。スカイツリーはどこ…… 「ぎゃぁぁぁぁ!!!!!」 一気に駆け下りるローラーコースター。今にも外へ振り落とされそうでベルトを握る手に力が入る。 「うぉぉぉ、うぁぁ」 ガタガタガタ・・・・・ アップダウンを繰り返し、ローラーコースターはゴールへ。 な、なんだよ。そんなに笑うなよ。え? 髪がボサボサ?? 「あっという間だったな。え? 叫んでないよ。全然平気だったって」 大笑いする妻。こんなに笑った妻を見るのも久しぶりだ。機嫌、直ったのかな? 「そうそう、このローラーコースター。還暦お祝いで昭和28年生まれの人は乗り放題なんだって! うちのおふくろがまさになんだよ。今度はミホも連れて4人で来ようか」 “久しぶりに遊園地に来ました。ローラーコースター、おふくろと同じ歳だって! 還暦の人は乗り放題だから、おふくろも今度乗ってみなよ”メール送信っと。 「ははは、“何言ってんの、越し抜かしちゃうわよ!”だって。そりゃそうか。 俺たちが60歳になったとき、ミホはえーっと、何歳だ?」 彼氏とかできてるのかな? 結婚とかしてるのかな? え? 泣きそうな顔になってるって? そんなこと……あるかも。 「あ、ミホの写真が送られて来たよ。おいしそうにオヤツ食べてる。そろそろ、帰ろうか。 あ、ミホへのお土産何しよう?」 “ホント、娘に甘いんだから”と笑う妻。子供を置いての2人だけのお出かけ。 こんなデート気分が楽しめるのも、いつでも家族と繋がっていられるから。 そしてこれからも、たくさんの人と繋がって行くのだろう。 「帰ろっか?」 差し出した私の手を少し照れくさそうに握る妻。 よかった、機嫌も直ったみたいだ。 「僕たち、繋がってるね。」 |