1月16日の舞台は「浅草・ひょうたんなべ」。

　
　私は、「山川えみ」。40歳。
　
　今日は、新年のごあいさつのため、子供たちを母に任せお出かけ。
　帰りは、主人の会社に近かったので待ち合わせ。
　
　
（着信音）
　
えみ　　もしもし、パパ！うん、そうだよ。待ってるからね。
　
　帰り道、まだ新年の初詣に行ってなかったね・・・という話になって、
　二人で浅草寺へ。
　
　
えみ　　なんか、二人で初詣なんて・・・何年ぶり？いや、何十年ぶり？？
　
　子供たちが元気で無事に育つこと。
　それだけをお願いし、お参りを済ませ、浅草寺を後に。
　
　
えみ　　さ、帰ろうか。
　　　　はー、風が冷たい！
　
　すると、主人はスマホで何かを検索しながら・・・
　「何かあったかいモノでも食べて帰ろうか」と。
　
　
えみ　　そうねぇ・・・
　　　　子供たちのご飯は ばあば にお願いしてるから・・・大丈夫。
　　　　一応、「子供たちのごはんをお願いします」ってメールしておこうかな。
　　　　
　　　　で、あったかいモノって何？お鍋とか？
　
　主人は、グルメサイトで高評価を得ている、とあるお店を見つけ、
　スマホの画面を私に見せた。
　
　
えみ　　あ、おでんね！いいじゃなーい！
　
　私たちが向かったのは「ひょうたんなべ・雷門店」。
　雷門から、仲見世の裏通りに入っておよそ徒歩30秒！
　
　路地裏には小ぢんまりとした、お店が軒を連ね、
　中でも目立つ赤いちょうちんに「おでん」の文字。
　
　年季の入った、入り口の引き戸を開けると・・・
　中はいっぱいのお客さん。
　そして、美味しそうな匂いを湯気がたちこめていました。
　
　
えみ　　タイミング良かったね。
　　　　カウンター席2つしか開いてなかったみたいだよ。
　
　店内は、カウンターとお座敷。
　カウンターの中では、おでん職人のみなさんが、
　忙しそうに働いている。
　
　私たちの座った向こうに、おでんのお鍋。
　一升瓶の並ぶ、その隙間から上がる湯気を見てると、
　冷えた体があたたまってきます。
　
　
えみ　　じゃあ、今年も健康で無事に、
　　　　子供たちのためにもお仕事がんばってください。
　　　　今年もよろしく～。
　
　主人と二人っきりで、しかも外食しながら乾杯なんて・・・
　ちょっと嬉しい！
　
　おでんの盛り合わせは、「松・竹・梅」の3種類。
　日本人らしく、真ん中の「竹（おでんが十二品）」を頼んでみました。
　
　
えみ　　きたきた・・・うわ～美味しそう！
　　　　やっぱり、まずは大根からね。
　
　透き通ったきれいなお出汁の中に、熱々の大根。
　お箸で割ると、中からさらに湯気が。
　一口サイズにしてハフハフしながら口へ。
　
　入れた瞬間、私も主人も、一度お箸を置いて、
　イスの背もたれに体をあずけて大きく深呼吸。
　
　
えみ　　ふぅ～～～美味しいね。
　　　　この一口で、一気に体があったまったわ。
　
　主人は、大好物のちくわぶにもかぶりつき、お出汁を一口。
　そして「くぅ～」っと言ってる。
　
　
えみ　　なんかパパ、グルメ漫画のワンシーンみたい。

　　　　でも、さっきまであんなに寒かったのに、
　　　　おでん食べただけでこんなにあったまるんだ。
　　　　イイとこ、見つけちゃったね。



えみ　　そういえば・・・「♪あったかいんだから～」って、
　　　　お笑いの人のネタ知ってる？
　　　　パパ知らないの！？子供たち、そのモノマネばっかしてるんだから。
　　　　お笑いコンビの人の・・・名前は忘れちゃった。
　　　　「♪あったかいんだから～」って歌うの。

　浅草の寒い夜、お店の雰囲気、おいしいおでん。
　こういうのって、してみたかったなぁ～って思ってた。
　主人には話したことなかったけど。


えみ　　今度はさ、子供たちとばあばとじいじも一緒に、みんなで来よう！
　　　　「ママたちばっかズルイ」ってきっと言われちゃうし。

　主人は、日本酒のメニューを私に見せ、
　たまになんだから飲んじゃえよって・・・すすめてきた。


えみ　　ま、確かに・・・外で日本酒なんて、まず飲むことないし・・・
　　　　じゃあ今日は飲んじゃおうかな！
　
　主人にすすめられるまま、お店イチオシの日本酒を一杯。


えみ　　あれ！？なんか飲みやすいね！
　　　　でも・・・こういって調子に乗ると、
　　　　あとで大変なことになったりするんだけど・・・今日はイイか！
　　　　
　お店から帰る時、
　今日は主人と手を《つないで》帰りたいなぁ～・・・なんて。


（メール受信）

えみ　　あ、おにいちゃんからメールだ。
　　　　「何時に帰るの？甘いおみやげ買ってきて」だって。
　
　　　　パパ、帰りに子供たちへ、おみやげ買って帰ろうね！
　
　
　
END

1月2日の舞台は「有楽町・TOHOシネマズ 日劇」。

　私は、「山野喜一郎」。小さな工務店を経営する、68歳。
　
　新年は、我が家に息子たち家族が集まり、にぎやかに迎えました。
　その後、東京の長男家族は正月旅行に出かけ、
　広島に住む次男家族が先ほど新幹線で帰っていきました。
　
　次男家族を東京駅まで見送り、ホっと一息。。。
　嵐のようなにぎやかさが去った後は、
　いつも通り私とかあさんの老夫婦二人きり。
　
（メール受信）
　
　さっき別れた孫から、かあさんのケータイへメールが届いた。
　「美味しいごはんをありがとう！楽しかったよ」という
　内容だったらしい。


喜一郎　みんな、帰っちゃったな。
　　　　次、また集まれるのは・・・夏休み頃になるか？

　当分孫たちに会えない寂しさを、
　独り言っぽくかあさんに言ってみたりして・・・


喜一郎　さてと・・・どうしますか、かあさん？まっすぐ帰りましょうか？

　すると、かあさんから意外な提案が！


喜一郎　え！？映画！！映画を観に行こうか！って・・・
　　　　お、うん・・・そうだな。せっかくだから、行ってみるか。

　すぐに思いついたのは、東京駅のお隣、有楽町にある映画館。
　「TOHOシネマズ 日劇」
　ここは、有楽町マリオンの阪急側にある映画館。
　「日劇」の名称は、かつてこの地にあった「日本劇場」に由来。
　1984年のオープン以降、数々の洋画と邦画の超大作や話題作を
　上映してきた、伝統と革新性を兼ね備えた劇場であります。


喜一郎　そういえば・・・

　十数年前にもこうやってかあさんと映画を観に行ったっけ。。。
　そう・・・ウチのかあさんは、映画が好きな人だった。
　我が家のDVDは、ほとんどがかあさんの好きな映画ばっかり。
　意外にも、アクション系の作品が多いのだ。


喜一郎　えーと・・・今の時間だと・・・ちょうどいい時間の映画はねぇ・・・

　私は、慣れないスマホで一生懸命、
　映画館のホームページで上映時間を調べた。
　かあさんのリクエストは、年末からお正月映画として
　CMも流れていた話題のサスペンス映画とのこと。


喜一郎　よし、ちょうど待たずにピッタリの時間があったぞ。これにしよう！

　マリオンの1階にあるチケット売り場で、
　そのサスペンス映画のチケットを買っていざエレベーターで9階へ。
　
　そういえば・・・
　このマリオンの1階で、仕事終わりに待ち合わせもしたっけ。。。
　まだ小さかった子供たちとかあさんと。
　私は仕事終わりで駆けつけ。
　みんなで、買い物をしたり、アニメの映画に付き合ったり、
　お祝いのごはんを食べに行ったり。
　そんなことを、エレベーターを待っている時にふと思い出した。


喜一郎　昔から、何か用事があると、このへんにはよく来てるな。

　かあさんも何か昔のことを思い出したのだろう、
　下を向きながら小さく笑っていた。
　
　エレベーターで映画館まで上がり、チケットの番号で席を確認した。


喜一郎　ちょうどイイ時間があって、よかったなかあさん。
　　　　さて、始まるまでまだ時間があるから・・・
　　　　コーヒーでも買ってこようか。
　　　　ん？あれ、かあさん？

　席に荷物を置くと、かあさんはすぐに売店へ向かっていた。


喜一郎　ん？なんだ！？お腹でも減っているのか・・・

　かあさんはすぐに戻ってきた。
　手には、売店で買った、今から見る映画のパンフレット。
　
　そういえば・・・
　かあさんは昔から、必ず映画の時はパンフレットを買う人だった。
　そして、始まるまでにじっくり熟読するんだった。思い出したぞ！
　初めて見た当時は、変な子だなと思ったもんだ。
　今日は・・・やけに「そういえば・・・」の多い日だ。
　

喜一郎　なぁかあさん。
　　　　映画が終わったら、どこかでごはんを食べて帰ろうかな。

　ついでにもう1つ、そう言えばを思い出した。。。
　かあさんは映画を観た後、必ず観た感想を話したい人なんだ。
　昔からそうだった。
　だから、ごはんを食べながら、あとでゆっくり感想を聞いてあげよう。
　
　今日は映画のおかげで、夫婦の《つながり》を再確認した日だな。


（開演ブザー）

喜一郎　お、始まるぞ。
　　　　あ！かあさん、ケータイの電源を切っておかないと。



END

12月26日の舞台は「浅草・六文銭 本店」[/uri]。

　俺は、「田辺のぶお」（30歳）。
　
　街はすっかり年末の雰囲気。
　都内はどこに行ってもイルミネーションがキレイ。
　
　そして、今日は田辺家の年末恒例の一大行事！
　田辺家親戚一同の大忘年会です。
　
　今回、親戚一同のスケジュールとお店選びを任せられたのは、
　田辺家の末っ子をオヤジに持つ、この俺。のぶおの担当でした。


のぶお　あー、和江おばちゃん、ココココ！
　　　　大塚のおじちゃんも一緒？おじちゃん、こっち座って！

　無事にこの日を迎えられてよかった。
　とにかく今日まで大変だった。
　仕事しながら、各親戚のウチに連絡とって、スケジュール合わせて、
　その間に会社の忘年会とかもあって・・・
　なんとかお店を抑えて・・・と。
　
　でも、親戚一同の若者たち・・・
　主に成人している孫たちで順番に担当の忘年会幹事なので、
　次にまわってくるのは8年後だ。


（着信音）

のぶお　もしもし・・・あー！ひろしにいさん！
　　　　そう、雷門のから・・・曲がったとこ。わかる？
　　　　めぐみちゃんは？うん・・・後から来るって？OK！
　　　　もし場所わかんなかったら、また電話して。
　
　続々と集まる親戚たち。
　こんな親戚一同が集まる忘年会をやってるなんて、相当珍しいと思う。
　盛大に忘年会をやるから、
　新年会はやらないのかと思うかもしれないが、
　実は新年会も本家でしっかりやるからスゴイ！
　
　ま、要するに・・・田辺家一家は代々酒飲みで、
　お祭り好きってことなんだろう。
　
　まだ着いてない親戚たちには、
　浅草「六文銭」の地図とグルメサイトのURLを送っておいてと。
　スマホがよくわからないっていうおじちゃんたちには、
　「いつでも電話してね。のぶお」と一言ショートメールして、
　来てるメンバーだけで忘年会スタート！　


のぶお　かんぱーい！今年もおつかれさまー！

　相変わらず、みんな乾杯の一口が多い！グビグビ飲むなー。
　ま、そんなこともあって、今回はこの浅草にある「六文銭」にした。
　
　浅草もんじゃのお店「六文銭 本店」は、お好み焼き、もんじゃ焼、
　鉄板焼き等、豊富なメニューと様々なトッピングが選べます。
　名物のカマンベールもんじゃ、昔ながらの味の牛スジもんじゃ、
　雑誌でも紹介されてる桜エビ焼きそば等が大人気！！
　
　みんなで鉄板を囲みシェアして食べる・・・これが一番！
　
　昨年は、居酒屋でやったのだけど、
　みんなイイ年齢だから飲むけどあんま食べなし。。。
　その前のお鍋のお店も、後半誰も食べなくなってたし・・・
　
　ここなら、食べたい人が食べたい分だけ頼めばいいから、大丈夫。


（シャッター音）
（メール受信音）
（着信音）

のぶお　あーもしもし・・・さだおさん！そうそう、もうすぐそばだから・・・

　　　　（ため息）はぁ。。。いそがし。。。
　
　あーはいはい、ナニ？もんじゃを作れって・・・わかりました！
　店員さんに頼んでも作ってくれるけど・・・
　いえ、俺が作りますよ。
　
　毎年のことだから、こうなることはだいたい読めていたけど・・・
　写真撮ったり、電話やメールの応対したり、もんじゃ作ったり、
　オーダーの確認したり・・・
　新入社員の頃の忘年会よりも、こっちの方が大変だ！！


のぶお　え？何おばちゃん？
　　　　あー結婚か・・・まぁそうだね、そろそろしないとねぇ・・・
　
　ほ～ら始まったよ・・・
　これも毎年恒例、おじちゃんおばちゃん達の、独身者への説教タイム。
　お酒が入って盛り上がってお腹もいっぱいになってくると・・・
　いつもお説教。
　これが、一人二人じゃなく、ウチの親から親戚全員みんなそうだから、
　我が田辺家のDNAなんだろう。
　
　あー、俺もこうなるのかな。。。


（スマホの時報）

のぶお　さぁーみなさん、そろそろここは〆ましょうか？
　　　　はい、二次会行かれる方は残ってください。
　
　とりあえず、一次会はここまで。
　今年も残りわずかですが、みなさんお変わりなく。
　そして、新年を迎えましょう！
　ま、すぐ新年会で集まりますけどね。
　
　では、よいお年を～！
　
　無事、2014年の親戚忘年会が終わった。。。
　
　年も、またこうやって、親戚一同で楽しく《つながれたらいいな》。



END

12月19日の舞台は[uri= http://www.takeya.co.jp/]「御徒町・多慶屋」[/uri]。

　
　私は、「岡本なつこ」（27歳）。
　
　今日は、家族3人で地元のディスカウントショップへ。
　年末の大掃除グッズと、あと棚とか収納ボックスとか・・・
　ま、いろいろと買い物がありますので。
　
　年末ということもあって、道も駐車場もお店も、
　どこに行っても混んでいる。


なつこ　じゃあパパ、私はお掃除グッズを選んでくるから、
　　　　その間にアイコと二人で家具コーナーを見ておいて。
　　　　こっち終わったら、電話するね！

　ということで、掃除グッズ探しの私と、
　棚選びのパパ＆アイコチームの二手に分かれて、お買い物スタート。


なつこ　はあ～いろいろ売ってて、目移りしちゃう・・・
　　　　順番に見てたら、1日じゃ足りないかも。
　
　ここ、御徒町駅のスグそば、
　ちなみに上野御徒町駅にも仲御徒町駅にも近い、
　今年で創業67年の老舗ディスカウントショップ「多慶屋（たけや）」。
　インパクトのある紫色のビルで、地元では有名。
　食品から雑貨、インテリア、家電、ファッションまで、
　このへんならなんでも揃うお店として、おなじみの多慶屋（たけや）。


なつこ　ディスカウントショップとかホームセンターって・・・
　　　　来ると毎回変なモノを買っちゃうのよね。
　
　いつだったか、昔つい「ハンモック」を買っちゃって、
　買って帰ったはいいけど吊るす場所がなくて、
　結局オークションで売ったことがあったな。。。
　
　今日は、変なモノ買わないように気をつけないと。


なつこ　あ、掃除グッズはココだ。
　
　スプレー系の洗剤とか、スチールウールとか重曹とか、
　バケツとかたわしとかそんな基本的なモノをカゴに入れ、
　その他に・・・と見渡してると、気になるモノが目につく！


なつこ　あーこれかぁ、100℃の蒸気だけで床をキレイにするってのは・・・
　　　　通販番組では何度も見たことあるんだけど、実物は初めてね。


（メール受信）

なつこ　あ、パパからだ。

　そのメールには写真も添付されていて・・・
　アイコがかわいいオレンジ色のソファに座っていた。
　
　そして一言・・・「これ、良くない？」と。
　
　私はカゴを置いて、猛烈な勢いで返信した。
　「ソファはもうあるでしょ！ちゃんと棚を探して！」と。


なつこ　ホントにもうーっ・・・
　　　　あとは、何か買い忘れてないかな？
　
　あれ？ナニコレいいじゃない！！
　
　それは、雨の日でも洗濯物を部屋の中で、
　しかも壁を上手く使って、
　つっぱり棒的なカンジで干すことのできる商品。
　
　
なつこ　へぇー、こんな方法で干すんだ！知らなかった。
　
　あ、でも・・・ウチの壁の幅がどのぐらいかわからないね・・・
　でもイイな、コレ。
　なんか、写真さえあれば、
　部屋の壁の幅がわかる便利なアプリがあるって聞いたことある・・・
　
　
なつこ　あーなんだっけぇ・・・なんてアプリだったっけ・・・
　　　　写真から長さを推測してくれるんだよねぇ・・・
　　　　名前なんだっけ・・・どうして知ったんだっけ・・・
　　　　ダメだ、何ひとつ思い出せない。。。


（メール受信）

なつこ　まただ・・・今度は何？
　
　またしても、写真添付のメール。
　
　ベッドと学習机と本棚とタンスなどが全部一体になった、
　子供部屋家具セットの一式。
　
　そのベッドに笑顔で寝てるアイコ。
　
　「アイコがこれ欲しいって」と。


なつこ　たくっ・・・
　
　今度は両手を使い、ブツブツ言いながら即行メールを返信！
　
　「アイコが言うわけないでしょ！まだ2歳よ！！」
　
　私は、お掃除グッズ選びを早々に済ませ、
　ぜんぜん棚選びをしてくれないパパとアイコのいるところへ向かった。


なつこ　あれ、いない？どこ？


（電話呼び出し音）

なつこ　もしもしパパ？どこ？
　　　　え？家具のコーナーじゃなくて・・・うん？・・・え！？どこ？？
　
　探してみると、二人は家具コーナーの外で休憩してるし。
　しかも、アイコは満面の笑顔で、アイスを食べてた。


なつこ　ねー、ちゃんと探してくれた？なんか、イイ棚あったの？
　
　聞けば、イイ棚はあったらしい。
　でも、棚を収める壁が、どのぐらいの幅なのかわからなかったとか。
　で、そんな長さを写真から計ってくれるアプリがあったけど、
　どんな名前だったかわからなくてあきらめたとか・・・


なつこ　えっ・・・ヤダ！こわい！なにそれ！？
　　　　数分前に私が困った出来事とおんなじだ！こんなことってあるの。。。

　そういった私を、パパとアイコは、キョトンとした顔で見る。
　
　夫婦になると似てくるって言うけど、
　おっちょこちょいな部分も《つながっちゃうんだ》！！
　
　ヤダ！こわい！



END

12月12日の舞台は[uri= https://twitter.com/eetokoyoyogi]「代々木・ええとこ」[/uri]。

　俺は、「東（あずま） 圭太郎」（29歳）。
　
　今日は、仕事終わりで彼女と待ち合わせ。
　クリスマスプレゼントを渡す予定。
　プレゼントは・・・彼女が雑誌を見て欲しいと言っていた「ピアス」。
　
　ネットで買うことも可能だったけど、
　何となくプレゼントで彼女への思いも伝えたくて・・・
　店頭まで買いに行った。
　
　お店に行くと、指輪も買ってあげたくなったけど・・・
　今回はお値段チェックだけにしておいた。
　
　
（メール受信音）
　
圭太郎　あ、あかねちゃんからメールだ！
　　　　「ごめん！ちょっと仕事が押しちゃって。もうちょっと遅くなる」
　
　年末は、どこもお仕事が忙しいらしい。
　
　「いいよ。先にお店で飲んでるから。ゆっくりおいで」と返しておこう。
　
　そんな俺の彼女・あかねちゃんは、有名なデパートで化粧品を売っている。
　
　
圭太郎　スイマセーン！生、おかわりイイですか。
　　　　あとね・・・「牛すじ焼」と「白菜と塩昆布のサラダ」。
　　　　お願いしまーす！
　
　鉄板焼きも美味しいこのお店は、
　代々木にある「お好み焼きダイニング・ええとこ」。
　
　お好み焼は大阪生野区で、創業35年になる老舗店のだし・生地に
　新鮮キャベツをたっぷり使用しているので、
　キャベツの甘みを生かした味わいに。
　
　そんな、粉もんから一品料理まで楽しめる、
　俺とあかねちゃんの行きつけ「ええとこ」。
　
　ま、彼女が来るまでの間、
　こうやって一人でちびちびやりながら待つのも悪くないな。
　なんか、ダンディな大人にでもなった気分。
　しかも、俺には今夜彼女へのクリスマスプレゼントを渡すという、
　メインイベントも待っている！
　しかもしかも！明日は土曜日で仕事も休み・・・最高じゃないか！！
　
　やばい・・・一人なのに笑ってしまいそうだ。
　
　
（メール受信音）

圭太郎　お、またあかねちゃんから。
　　　　仕事はどうかな～？
　　　　
　　　　「あと30分ぐらいだと思う。ゴメンね」・・・と。
　
　　　　ぜんぜんいいよ。
　　　　30分なんて、飲んでたらあっという間じゃん。
　
　俺は、謝るあかねちゃんに、気にするな！ぜんぜんOK！的な
　絵文字を送って返しておいた。
　普段絵文字なんて送らないから、どの絵文字がピッタリなのか
　15分ぐらいかけて探して、そしてやっとの思いで送った。
　
　でも、ホントに今日は遅れていることを気にしないで欲しいと思った。
　
　
圭太郎　マスター、また生のおかわりを。
　　　　お好み焼きは・・・あかねちゃんが来てから頼むかな・・・
　　　　じゃああとね、「牡蠣バター」を！
　
　ココのお店は、あかねちゃんがまだ彼女の前・・・
　ただの飲み友達の頃から来ていて、
　そのあと付き合うことになってからも来てるし、
　それからだいたい月に１～２回は来てる。
　そして、今年の年末も・・・
　来年の今ごろは、夫婦として来られるかな？
　２～３年後は、家族3人で来られたら・・・幸せだな。
　
　そんなことを考えながら、
　たまにクリスマスプレゼントのピアスをチラ見し、ひとり酒。
　意外と進む。。。
　
　
圭太郎　はぁ・・・酔ったな。
　　　　あれ？まだ連絡ないか・・・
　
　こっちから、電話は何度かしてみようかとも思った。
　しかし！遅れても気にするな、ぜんぜん大丈夫と言った手前、
　電話はかけづらかった。
　
　
（メール受信音）
　
圭太郎　やっと仕事が終わったかな・・・
　　　　
　　　　「ゴメンナサイ<(_ _)>あと30分って言ったけど、
　　　　　結局お店が終わるころに到着できそうな感じです」
　
　
圭太郎　そっかぁ・・・
　
　　　　「あと・・・ホントにゴメン！！
　　　　　欠員が出て・・・明日も仕事になっちゃったの・・・」
　
　
圭太郎　えっ・・・明日も仕事！？
　　　　いや・・・クリスマスプレゼントが・・・
　　　　はあ・・・会えないし渡せないのか・・・
　
　　　　「いいよ！仕事だもんな。仕方がない。
　　　　　　じゃあ明日、仕事終わりに俺が迎えに行くね！」
　
　俺は、精一杯の強がりと懐の深いフリで、
　俺なんかより仕事を優先しろよってメールを返した。
　
　スグに帰ってきた・・・「ありがとう」に涙の絵文字。
　
　
圭太郎　こんな日だってある、大丈夫だ。
　　　　俺と彼女は、会えなくたって、気持ちが《つながってるんだから》。
　
　たぶん。。。大丈夫。。。きっと。。。やや不安。。。
　
　
　
END