[番組情報]2020年5月26日
今週は新田弁護士による新型コロナウイルス感染症にまつわる「家賃」の法律相談についてです今週は、国際関係の弁護士業務が専門 宇都宮中央法律事務所の新田裕子弁護士に 新型コロナウイルス感染症にまつわる様々な法律相談 「家賃」 について、伺いました。 ●家賃の支払いの相談 まずは賃貸借契約書を見てください。 もし、売り上げの大幅な減少があった場合は 値下げを申し入れることができる、というような条項があれば、 それに従い申し入れができることになります。 契約書に規定がないときは、結論からいうと、 値下げを求める法的な根拠は残念ながらありません。 民法には「賃借物の一部が 賃借人の過失に因らないで滅失したとき」 に賃料の減額請求ができるという決まりがあるのですが、 コロナの場合「賃借物の滅失」ではないので、 減額請求はできません。 ちなみに、4月1日に民法が改正されていて、 4月1日以降に締結した賃貸借契約だと、 適用される条文が違いますが、 建物を使って営業は出来るけれども、 売り上げが落ちて賃料を支払えない、 というケースだと結論は同じです。 ●賃料について 現在、 特別家賃支援給付金というものが審議されています。 前年より3カ月間で 3割以上の減収となった事業者らを対象に、 6月以降の半年分は家賃の3分の2を国が助成するものです。 上限は中小企業が月額50万円、 個人事業主が同25万円となる見込みです。 多店舗展開されている事業者の方には 焼け石に水と言う意見もありますが、 何もないよりいいのは当然で、 意義はあることだと思います。 ●家賃についての諸外国の対応 アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、 新型コロナウイルスの問題が起こってから、 家賃の支払い猶予や、 家賃の未払を理由とした立ち退き請求の禁止など、 速やかな法整備がなされました。 例えばシンガポールでは、 家賃の支払いが最大6か月猶予される制度があります。 具体的には、テナントが大家さんに、 新型コロナウイルスの影響で 家賃が払えないと通知すれば、 大家さんは家賃の支払いがなくても 契約解除や立ち退きなどを求められなくなります。 これは家賃が免除されるわけではないのですが、 立ち退きの心配がなくなるという意味では、 効果的な制度です。 ●大家さんとの話し合いが大切 法的な根拠はなくても、大家さんに事情を説明し、 話し合いをすることはできます。 今とれる一番現実的な手段はこれです。 国土交通省と国税庁から指針が出ているのですが、 大家さんが家賃を値下げした場合、 今までは寄付金と取り扱われていましたが、 今は損金参入できます。 これは大家さんにとってもメリットになりますので、 こういうこともお伝えしながら、交渉して、 大家さんに合意をしていただくほかありません。 話合いは腰が重いと思われる方もいると思うのですが、 ご自身で言いにくい場合には 不動産屋さんや弁護士などを介して、 交渉をしてください。現在日本には、この状況下で 家賃を強制的に下げられるような法律はないですし、 諸外国のように支払猶予等の制度もないので 勇気を出して話し合いをするのが 今とれる最良の手段です。 大家さんとしても、 家賃収入が減るのは困ると思いますが、 今の経済状況からすると、 新しいテナントを見つけることは そう簡単ではないはずです。 そうすると、多少賃料を値下げしても、 借り続けてもらうことが 大家さんにとってもメリットになることも多いと思います。 |
~海外就職、外国人雇用、グローバル人材を応援~