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2015年8月25日

8月25日はシンガポールから新田裕子弁護士の情報

毎月最終週は、シンガポールのロダイク法律事務所に出向し勤務されている、 宇都宮中央法律事務所の新田裕子(にった・ゆうこ)弁護士に
海外展開における、法律問題のキーポイントを伺って行きます。

◯さて、今回は、『国際仲裁』について伺っていきます。

●国際仲裁とは?
国際仲裁とは、海外においてよく使われている、紛争解決の手段です。裁判の場合は、 裁判所という国の機関で、裁判官という公務員が、紛争を裁きますが、国際仲裁の場合は、 仲裁機関という私的な機関において、仲裁人という、例えば弁護士などの私的な人物が紛争を裁きます。福島原発の事故に関して、被害者と東電の間の紛争を、原子力損害賠償紛争解決
センターという機関において、仲介委員が裁く、ということが行われていますが、 基本的にはこれと似たような構造になります。

●国際仲裁というのは海外ではよくあるのですか?
はい。海外では裁判と同じかそれ以上によく使われています。私もシンガポールで実際に国際仲裁を行っているのですが、周りの弁護士から、日本人はなぜ、そもそも「仲裁」というものを知らないのか、利用しようとしないのか、とよく聞かれます。日本は裁判所の質が良すぎるので仲裁に頼る必要がなかったから、しかも、日本人は裁判所という公的な機関によるお墨付きがあった方が安心するから、というのが私の意見ですが、いずれにしても、日本以外の国においては、欧米でもアジアでも仲裁は非常にメジャーです。

海外の企業と取引すると、先方から提示される契約書に、紛争となった場合には、シンガ ポールの仲裁センターにおける仲裁で解決する、などと書かれていることがよくあります。

●国際仲裁は裁判と比べてどんなメリットがあるのですか?
一つ目は、国際性です。
例えば、日本の会社が中国の会社を日本で訴えて勝訴判決を得たとしても、中国にある中国の会社の資産は、日本の判決では直ちには執行できません。日本の判決の効力は原則的には日本の国内でしか生じないからです。この場合、日本の判決の、中国での承認・執行という別の手続きを取らなければならず、面倒でコストもかかります。

他方、国際仲裁の場合は、ニューヨーク条約というのがあり、140か国以上ある加盟国の間では、仲裁判断に基づいて強制執行が許可されます。

二つ目は、中立性です。
東南アジアの発展途上国においては、そもそも裁判所が機能していなかったり、裁判官の腐敗があったりして、単純に賄賂をたくさん裁判官に渡した方が勝つ、という国がまだあります。日本の企業はコンプライアンス上賄賂を渡すなどということはできませんので、これは非常に頭の痛い問題です。また、アメリカ場合は、陪審制という、一般市民が裁判に参加する制度が民事事件にもありますので、例えば、アメリカ人である陪審員は日本の企業よりアメリカの企業を有利に扱うのではないか、特にという不安が常につきまといます。

他方、国際仲裁の場合は、日本企業と中国企業間の紛争であれば、仲裁の場所は第3国である シンガポール、仲裁人は、シンガポール人、などと決めれば、中立性を保つことができます。

他にも、非公開であること、迅速であること、仲裁人としてその道の専門家を選べること、などのメリットもあります。専門家を選べるというのは、例えば、IT関係の訴訟であれば、 仲裁人に知的財産専門の弁護士や大学教授を選ぶことによって、安心して仲裁を任せられる、という意味です。

●逆にデメリットは?
私の経験上いうと、コストがかかることです。国際仲裁を推進している方々は、よく、 国際仲裁は裁判のように何年もかからないので、その分効率が良く、コストも節約できる、と言ったりするのですが、実際は少し違うかなと思っています。裁判であれば、裁判官には費用を払いませんし、裁判所に払う手続き費用も莫大な額にはなりにくいですが、仲裁の場合は、仲裁人や仲裁機関にも当事者が費用を払わなければならず、そのほかにもちろん自分の弁護士の費用も払わなければなりませんので、最終的に相当なコストがかかります。
仲裁人を3人とする、一般的な国際仲裁の場合、請求額は1億円くらいでないと、 経済的合理性がないと思います。

●そこまでの請求額というのはなかなか中小企業では難しいのでは?
はい、おっしゃるとおりです。なので、中小企業の場合には、国際仲裁か何なのか、それに いくらかかるのかが分からないまま、安易に、仲裁条項の入った契約書にサインしないというのが、まず、大切です。仲裁条項の入った契約書を締結してしまうと、いざ、売掛金が数百万回収できない、となったときに、仲裁でなく、裁判をする、ということは原則的には
できません。数百万円を回収するためにコストが数千万かかる、よって、泣き寝入りをする しかない、というおかしなことになってしまいます。ですので、契約書締結の段階で、 仲裁条項を入れておくことが本当にいいのか、入れるとしてもどんな内容の条項がいいのか、予め弁護士と一緒に確認しておくことが必須になります。

●中小企業でも実際国際仲裁をするというケースはありますか。
あります。例えばシンガポールの仲裁センターには、簡易仲裁という、少額な請求額向けの手続きが簡素化された仲裁も用意されていますので、中小企業がこれを利用するということは あり得ます。その場合、原則として、契約書を作成する段階で、それを選択しておく必要が あります。簡易手続きには細かい要件がありますし、例えばシンガポールの仲裁センターには簡易手続きがあるが、香港の仲裁センターにはない、など、国によってもまちまちですので、 選択の際によく検討しておく必要があります。

今までのはなしをまとめると、国内取引であれば、紛争となった場合には「宇都宮地方裁判所を第一審の合意管轄とする」の一言で足りることが多いわけですが、国際取引の場合には、そもそも裁判なのか、仲裁なのか、仮に仲裁とした場合には、どこの国の仲裁センターを使うのか、仲裁人は誰にするのか、使用言語は英語でいいか、簡易仲裁を利用するか、など、
検討すべきことがたくさんありますので、契約書作成の段階で、 弁護士に相談していただくことをお勧めします。

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