[番組情報]2021年3月30日
今週は宇都宮中央法律事務所の新田裕子弁護士に「トラブルの解決」について伺いました。~海外就職、外国人雇用、グローバル人材を応援~
今週は、国際関係の弁護士業務が専門の
宇都宮中央法律事務所の新田裕子弁護士に 貿易に関する重要ポイントのうち、 「トラブルの解決」 について、伺いました。 ○貿易トラブルが起こった場合
貿易のトラブルというと、例えば 代金が支払われない、商品が届かない、 届いた商品に不具合がある、などです。 このようなことが起こった時には、 まず当事者で話し合ってください。 ここで重要なのは、ビジネスの話合いは、 土台が必要だということです。 話合いの土台は、基本的には契約書です。 あとは、注文書、注文請書、 メールのやりとりなどもこの土台になります。 ただ話し合うのではなく、契約ではこう書いてある、 こういうやりとりをしました、など、 一定の根拠が必要だということです。 〇弁護士によるトラブル解決 相談された弁護士は、 契約書を確認して、法的にはどうなるのかを分析します。 例えば、コロナで、 外国から商品を送ってもらえない、などという 相談の事例がよくありました。 そういう時に弁護士は契約書を見て、 不可抗力条項があるからしかたないということなのか、 逆に損害賠償請求できる、ということなのか、判断します。 その上で、これは、不可抗力でしたかないケースなので、 残っている在庫の一部だけでも、 追加で発送してくれないか交渉した方がよいですよ、とか、 逆に、法的には損害賠償請求できるケースなので、 強く要求した方がいいですよ、とか、 どのように話し合うべきなのか、その戦略をお伝えします。 話合いと言うと、 ただ誠実に話し合うだけと思ってしまう方もいるのですが、 そうではなく、話し合いにも理屈という武器がいりますので、 それを調達するようなイメージです。 〇話し合いでまとまらなかった場合は? 調停、仲裁、裁判など、第三者を交えて紛争解決をします。 ・調停とは、 第三者を間に挟んでの話合いによる紛争解決手続きです。 ・仲裁は、裁判所外の紛争解決手続きで、 仲裁人を選べることや、非公開であることや、 ニューヨーク条約という条約があるために、多くの国で 強制執行が比較的容易にできることに特徴があります。 ・裁判は、ご存知の方も多いと思いますが、 裁判所という国の機関での紛争解決手続きです。 国際紛争の場合、どこの国の裁判所を使うかが問題になります。 時間の関係で、詳しくはお話しませんが、 調停、仲裁、裁判と3種類あるんだということだけ、 とりあえずご理解いただければよいかと思います。 〇どの解決法が望ましい? ケースバイケースです。 私個人としては、 基本的に仲裁をおすすめすることが多いですが、 絶対ではありません。 大事なのは、トラブルになった時に考えるのではなく、 契約書の中で、 紛争になったらどうやってそれを解決するのか、 予め決めておくということです。 契約書を作るときに、どういうトラブルがあり得そうか、 トラブルの金額はどのくらいになりそうか、 あとは、それぞれの手続きのメリットデメリットを踏まえ、 ケースバイケースで決めていきます。 取引をスタートする時にはすべてポジティブに見えるので、 最悪の事態になった時のことを考えにくい方が多いのですが、 はじめにきちんと検討して決めることが必要です。 〇話し合いによる解決はNG? 日本人はこの決め方が非常に好きで、 これだけでいきたいといわれることがあるのですが、 これはお勧めできません。 話し合って解決できないときにどうするかという問題なので、 これだと何も決めていないことと同じなのです。 誠実協議条項というのは、 外国人弁護士には理解しにくいもののひとつで、 私もシンガポールにいた時には、 同僚のシンガポール人弁護士によく、 「日本企業は何故この意味のない条項をいれたがるのか」 と言われていました。 私としては、話し合いの精神を大事にするという意味で 入れること自体は構わないと思うのですが、 これだけだと不十分なのは確かです。 今日ご紹介した情報は栃木から世界へジャンプの Youtubeチャンネルもご覧ください。 新田先生には2015年からこの番組に6年間ご出演いただき、 海外ビジネスの法律的アドバイスを 色々と教えていただきました。 本当にありがとうございました! |