[番組情報]2020年8月25日
今週は新田弁護士による「コロナ禍において、雇用に関する法的なポイント」ついて~海外就職、外国人雇用、グローバル人材を応援~
![]() 今週は、国際関係の弁護士業務が専門
宇都宮中央法律事務所の新田裕子弁護士に 「コロナ禍において、雇用に関する法的なポイント」 について、伺いました。 ●日本で新型コロナウイルスの影響で 解雇・雇い止め(見込み含む)にあった人は 7月31日時点で4万1391人、 このうち製造業が最も多い7003人でした。 6月次の完全失業率は2.8%と増加傾向です。 ![]() ●雇止めとは
有期雇用契約の従業員について、 契約更新をせずに雇用契約を終了させることです。 例えば、2019年9月1日から 1年間の有期雇用契約を締結すると、 2020年8月31日に満期となります。 ここで、またもう1年と更新せずに 契約を終了することを雇止めといいます。 平時、つまり普通の時だと、 この1年間この方にお願いしていた仕事と言うのは 来年も同じく存在していることが多いので、 契約は更新されることが多いと思うのですが、 コロナ禍だと、例えば、 レストランでお客さんが減ったので スタッフももうそんなにいらないとか、 会社の売り上げが減って経営が苦しいので、 今まで10人の事務員さんに任せていたのを 8人にしようとか、 有期雇用契約の社員について、 更新をしないという状況が起こっているのです。 ●正社員の雇止めについて 雇止めは、契約満了になった時に 更新しないことをいいます。 正社員の場合には、無期雇用契約、 つまり、いつからいつまで。という 期限のある契約期間はないので、 雇止めというのは観念できません。 雇止めと似て非なるものとして「解雇」があります。 これは、契約期間の途中で使用者が 一方的に雇用契約を終了することをいい、 これは正社員についてもありえます。 ●雇止めをする場合の注意点 期限が満了になったからといって 簡単には雇止めできない。 例えば 2019年9月1日から2020年8月31日まで 1年間の契約なのだから、 8月31日で契約が終了するのは、 ある意味当然のはずです。 必ず更新しないといけないとしたら、 何のための契約期間なのだと思うかもしれません。 しかしながら、労働契約法上、 雇止めの法理というルールが定められており、 一定の場合には、 契約更新しないことが違法になることがあります。 ●契約更新をしないことが違法になる場合。
□1 「当該有期労働契約が過去に反復して更新され、 期間の定めのない労働契約と 社会通念上同視できると認められる場合」 つまり、過去に契約更新が繰り返されており、 実質的に正社員と同じになっているという場合です。 □2 「当該労働者において、 当該有期労働契約が更新されるものと期待する 合理的な理由があると認められる場合」 これは会社が更新を期待するような言動をしていたり、 業務内容が一時的なものでなく恒常的な業務だったり、 従業員が更新されると期待して、 当然だという事情がある場合です。 これらの場合は、 正社員を解雇する時のような厳しい基準で、 更新しなくてよいかを判断しなければいけません。 つまり、更新しないことがかならず、 違法になるわけではないのですが、 更新しなくていいかどうかのハードルが、 かなり上がることになります。 契約を更新しないことが違法になるかもしれない。 この2つの場合というのは、けっこう複雑なのです。 いろいろな事情を総合的に考慮して、 判断する必要があるので、 ここは専門家にお願いしていただいた方が 確実だと思います。 ●「レイオフ」とは
レイオフと言うのは、 企業の業績が悪化した場合などに 従業員を解雇する制度をいいます。 これは一時的だったり永久だったりします。 例えばアメリカだと、 そもそも会社はいつでも理由なく 従業員を解雇できるのが原則です。 日本は正社員として採用すると 解雇するには合理的な理由がいるのですが、 それとは全く違うのです。 なので、今回のコロナ禍のような状況では、 会社が一度に何万人もレイオフしたりするのです。 日本にはレイオフの制度はありません。 アメリカで何万人もレイオフされた。 というニュースを聞くと、 自分もそうなったらどうしようと、 不安になるかもしれないのですが、 日本で会社に勤めている人については レイオフされるという心配はないです。 ●「リストラ」ととの違いは? リストラというのは法律用語ではないのですが、 一般的には、整理解雇をさすと思います。 例えば、コロナ禍で工場を閉鎖するので、 そこで勤務していた従業員を整理解雇するという場合です。 整理解雇はレイオフと違って非常に厳しい条件があります。 判例上 ①人員削減の必要性があること ②解雇回避努力義務を尽くしたこと ③人選の合理性、 ④手続の相当性という要件を満たす必要があります。 アメリカのレイオフのように簡単にできるものではないです。 |